医療ミスの訴訟中に本人が亡くなってしまった。賠償請求は引き継げるもの?

医療事故が原因で病状が悪化したり、余分な治療が必要になった場合は、加害者は損害賠償責任を負い、被害者は不法行為責任に基づく損害賠償請求権、精神的苦痛に対する慰謝料請求権を行使することができます。そして訴訟を行っている途中で本人がなくなってしまった場合は、相続人であれば請求権を引き継ぐことができます。それは遺族の保護のためです。
相続が発生するとき、相続の対象になるのは目に見える物だけでなく、目に見えない権利も含まれます。損害賠償請求権も権利であるので相続の対象になります。
かつてはこの点について法律上の論争がありました。当事者が死亡した時点で請求権は消滅し、相続されないという説もあったのです。しかしこのような議論は現実離れしており、医療ミスの被害を受けた遺族の保護の必要性を満たすことができません。また、亡くなっていない被害者は賠償請求権を持ち、すでに亡くなった被害者は請求権を持たないというのでは不公平が生じてしまいます。そこで現在では請求権は存在し、相続の対象にもなるというのが定説です。
また精神的苦痛に対する慰謝料請求権も存在し、相続人であれば引き継ぐことができます。
なお、損害賠償請求権、慰謝料請求権ともに相続の対象ですから、相続人が複数いる場合には分割することになります。この場合は遺言の有無に関係なく、総額を法定相続人が各自の相続分に従って取得することになります。
以上のように、医療ミスの訴訟で本人がなくなった場合、遺族保護と被害者間の公平の観点から、賠償請求権は相続することができるというのが定説です。